振り子の等時性?

質量 $m$,長さ $l$ の振り子の運動は

\[ ml \frac{d^2\theta}{dt^2} = -mg\sin\theta \]

で表される。$g \approx 9.8\,\mathrm{m/s^2}$ は重力加速度である。

振れの角度 $\theta$(ラジアン単位)が小さいなら $\sin\theta \approx \theta$ と近似できる。その場合は $\theta = \theta_0 \sin(2\pi/T)t$ という単振動の解が存在する。これを代入して周期 $T$ について解けば,周期は

\[ T = 2\pi \sqrt{\frac{l}{g}} \]

となり,一定である。これが振り子の等時性である。

ただ,$\sin\theta \approx \theta$ はあくまでも近似であり,現実の振り子の周期は最大の振れ角度 $\theta_0$ に依存する。これは第1種の完全楕円積分

\[ K(m) = \int_0^{\pi/2} \frac{dt}{\sqrt{1 - m \sin^2 t}} \]

を使えば $\theta_0 \approx 0$ での周期の $(2/\pi)K(\sin^2(\theta_0/2))$ 倍になる。

Rでは例えば pracma パッケージの ellipke() 関数で完全楕円積分 $K(m)$,$E(m)$ が求められる。$K(m)$ は ellipke(m)$k として求める。

library(pracma)
f = function(x) { 2 / pi * ellipke(sin(x*pi/360)^2)$k }
f(45)
[1] 1.039973
f(90)
[1] 1.180341

つまり,±45度まで振ると周期は4%伸び,±90度までだと18%伸びる。

0度から90度までの周期の相対値をプロットしてみよう。

x = 0:90
plot(x, f(x), type="l", xlab="振幅(度)", ylab="周期")
振り子の周期

さて,文科省サイトの小学校理科の観察,実験の手引き詳細にある小学校理科の観察,実験の手引き 第5学年A(2) 振り子の運動というPDFファイルには次のように書かれている(強調は奥村による)。

ここでは,糸におもりをつるして,おもりの1往復する時間を,おもりの重さ,糸の長さ,振れ幅を変えながら測定し,糸につるしたおもりの1往復する時間はおもりの重さや振れ幅によっては変わらないが,糸の長さによって変わることをとらえるようにする。おもりの重さが,おもりが1往復する時間を変化させる要因になるかを調べるためには,糸の長さや振れ幅を一定にして,おもりの重さだけを変えて調べるようにする。このように,変える条件と変えない条件について,条件を制御しながら計画的に実験できるようにすることが大切である。

また,実験では時間のはかり方や実験装置の不備などによって,結果に誤差が生じやすい。おもりの重さや振れ幅が,おもりの1往復する時間に関係すると予想や仮説をもった児童の中には,実験の誤差をおもりの1往復する時間が変化したととらえる児童がいる。これは,自分の予想や仮説に合うようにデータを処理しているからである。正確な実験に取り組ませる一方で,データ処理の仕方についても指導することが大切である。特に今回の実験では実験結果を表に整理するだけではなく,グラフなどを用いて表現させると誤差と変化の違いに気付かせることができる。本単元を通して,誤差の考え方を指導するとともに,実験には誤差が生じることを理解させ,誤差をふまえながらデータを処理し,結果を正しく解釈する力を身に付けさせるようにする。

これを書いた先生は,振り子の等時性は厳密な法則であると思い込んでいるようである。振幅が4%とか18%とか伸びたなら,小学5年生ならそれを見つける子がいても不思議でない。そのような優れた児童に「それは自分の予想や仮説に合うようにデータを処理しているからだよ」という先生のほうが思い込みに支配されているように思う。